病院の相談員に「老人ホームを探してほしい」と伝えたのに、数日たっても候補が出てこない。退院日だけが決まっていく。そんな状況で焦っている方は少なくありません。
最初の一手は、相談室に「条件メモ」を1枚渡し、「次の連絡はいつ、どなたからですか」と聞くことです。探してくれないと感じる理由の一つとして、相談員が動いていないのではなく、動くための条件が家族から届いていないことが考えられます。
この記事では、次の3つが分かります。
- 相談員が施設探しの前に何を求めているか
- そのまま使える条件メモの雛形
- 頼み方の言い換え例と、残り日数別のやること
病院の相談員は、なぜ「探してくれない」と感じるのか
病院の相談室にいる医療ソーシャルワーカー(以下、相談員)は、患者と家族が退院後の生活を整えるための窓口です。ただ、窓口の仕事は「家族の代わりに行き先を決める」ことではありません。
徳島県の手引きには、入院後1〜2週間の時点で在宅退院ができるかを判断する基準や、退院後に新たに介護保険の利用が見込まれる場合の進め方、入院中の患者と家族向けのリーフレットが収録されています。相談員は、こうした流れの中で、本人の状態と家族の意向を聞き取りながら退院後の生活を調整する立場にあることが読み取れます。なお、これは徳島県の手引きの内容で、全国どの病院でも同じ運用とは限りません。
そこで感じやすいのが、次のようなすれ違いです。家族は「施設を探してくれる人」と期待し、相談員は「希望を聞いて、情報を渡し、調整する人」として動いています。希望の地域、予算、本人の医療的なケア、家族が通える範囲が分からないと、相談員は次の一歩を出せません。
紹介する候補の件数や見学の同行は病院ごとに異なります。「どこまでお願いできますか」と最初に聞くと、期待のずれが小さくなります。
探してもらう前に、家族が決める4つの条件と条件メモ
相談員に動いてもらうには、条件が言葉になっていることが大切です。完璧でなくて構いません。決まっていない項目は「未定」と書いて渡せば、相談員が一緒に絞り込めます。
1つ目は、希望する地域です。家族が通いやすい駅や自治体名で伝えます。2つ目は、月々に払える費用の上限です。入居時にかかる費用と月額を分けて考えると、話が早く進みます。3つ目は、本人の状態で、病院から説明を受けた医療行為(たんの吸引、胃ろう、インスリン注射など)の有無、歩行や食事の状況を書きます。4つ目は、家族側の事情で、面会に行ける曜日や、見学に同席できる日です。
介護保険の認定を受けているかどうかも、最初に確認します。厚生労働省の介護サービス情報公表システムによると、申請から認定の通知までは原則30日以内で、認定の有効期間は新規の場合、原則6か月(3〜12か月)です。申請がまだなら、これを先に動かす必要があります。
次の雛形を、手書きでもスマートフォンのメモでもよいので埋めて、相談室で渡してください。1枚にまとめておくと、相談員が院内の担当者や外部のケアマネジャーに共有しやすくなります。
【退院後の住まいについての条件メモ】 ・患者さま:氏名/年齢/現在の病棟 ・退院予定日:○月○日(病院から伝えられた日) ・介護保険:要介護○/申請中/未申請(いずれかに丸) ・担当ケアマネジャー:いる(事業所名)/いない ・医療的なケア:あり(内容)/なし/主治医に確認予定の項目(内容) ・希望地域:第1希望 第2希望 ・費用:入居時 ○万円まで/月額 ○万円まで ・本人の意向:施設に入ることを(了承している/迷っている/未相談) ・家族の連絡先:氏名/続柄/連絡がつく時間帯 ・見学できる日:○曜日の○時以降 ・ご相談したいこと:候補の紹介件数、見学の調整、次回の連絡日
分からない部分は空欄にせず、「主治医に確認予定」と書いておくと、相談員も補足しやすくなります。
頼み方の言い換え例(NG→OK)
同じ依頼でも、言い方ひとつで相談員が取れる行動が変わります。次の表は、よくある言い方を、動きやすい言い方に置き換えた例です。
| 言い方 | 伝わりにくい例 | 動きやすい例 |
|---|---|---|
| 探す範囲 | 「どこか良い施設を探してください」 | 「○○駅から30分圏内で、月額○万円までの候補を3件ください」 |
| 期限 | 「なるべく早くお願いします」 | 「○月○日までに見学を1件入れたいので、○日に状況を教えてください」 |
| 役割分担 | 「全部お任せします」 | 「候補の絞り込みは相談員さんと、見学の予約は私がします」 |
| 状況の確認 | 「まだですか」 | 「今はどの段階でしょうか。私が次にやることはありますか」 |
表の考え方は、数・期限・役割を言葉にすることです。件数を決めると相談員は動きやすくなり、連絡日を決めると家族は待つ時間を管理できます。
退院までの日数別やることリスト
残り日数ごとの動き方を表にしました。所要日数を示すものではなく、この順で動くと進めやすいという行動の提案です。入院中は認定調査に伺えず、手続きが遅れることがあると神戸市も案内しています。申請は早めが安心です。
| 時期(残り日数) | やること | 相談先 | 用意するもの |
|---|---|---|---|
| 14日前 | 退院予定日の根拠を聞く。介護保険の申請状況を確認し、未申請なら申請する | 病院の相談室、市区町村の介護保険窓口 | 保険証、本人の情報、申請書類 |
| 10日前 | 条件メモを渡し、次回の連絡日を決める。ケアマネジャーがいなければ決める | 病院の相談員、地域包括支援センター | 条件メモ、費用の上限 |
| 7日前 | 候補の施設を2〜3件に絞り、見学の日程を入れる | 相談員、ケアマネジャー、入居相談窓口 | 見学の日程表、質問のメモ |
| 5日前 | 見学を済ませ、申込みの条件と入居日の希望を確認する | 見学先の施設、相談員 | 診断書や情報提供書の依頼 |
| 3日前 | 退院後の移動方法と、当日の付き添いを決める | 相談員、家族、施設 | 持ち物リスト、移動手段の手配 |
| 当日 | 退院手続きと、施設またはつなぎの場所への移動 | 病院の会計、相談員 | 保険証、薬、退院時の説明書 |
認定の結果が出る前でも、介護サービスが必要になった場合は、神戸市では暫定のケアプランで対応するとしています。自治体により取り扱いが異なるため、お住まいの市区町村の窓口で確認してください。
相談員だけで足りない時の次の一手
相談員に条件メモを渡しても、候補が絞れない、見学の調整が追いつかないという場合があります。その時は、民間の入居相談窓口を並行して使う方法があります。
たとえば「シニアのあんしん相談室」は、公式サイトによると(2026-11-03確認)、相談・見学予約・見学同行・資料請求が無料で、受付は9:00〜18:00(平日・土日祝)です。条件メモをそのまま伝えれば、最初の聞き取りが短く済みます。
相談員と入居相談窓口は、どちらか一方を選ぶものではありません。病院側には本人の医療情報があり、窓口側には施設の空き状況を調べる手段があります。条件メモを両方に同じ内容で渡すと、伝達の食い違いを防げます。
退院日の延期を相談したい方は、病院への伝え方も確かめてください。関連記事: 病院に退院を迫られたら?老人ホームを探す前の段取り 残り1週間を切っている方は、日ごとの動き方も確認できます。関連記事: 退院まで1週間で老人ホームを探す|日数別やることリスト 入居相談窓口を使う人と、相談員とケアマネジャーで足りる人の違いも整理できます。関連記事: 老人ホーム紹介センターを使うべき人と不要な人の判定表
よくある質問
相談員に何度も連絡すると迷惑ではありませんか。
連絡の回数より、中身が整理されているかが大切です。次回の連絡日を決め、聞きたいことを条件メモにまとめておけば、短い連絡で済みます。連絡は日時を決め、要件を1〜2つに絞ると伝わりやすくなります。
相談員が候補を出してくれない時、他に頼れる人はいますか。
担当のケアマネジャーがいる場合は、まずそちらに相談できます。いない場合は、お住まいの地域の地域包括支援センターが窓口になります。要介護1以上の方のケアプランは居宅介護支援事業者のケアマネジャーに、要支援の方は地域包括支援センターに依頼するのが厚生労働省の案内です。
本人がまだ施設入居に前向きでない時は、どう伝えればよいですか。
条件メモの「本人の意向」の欄に、迷っている旨をそのまま書いてください。相談員は、本人の気持ちを踏まえて話を進める立場にあります。入居を決める前に見学だけ先に行うなど、進め方を一緒に考えてもらえます。本人の意思に関わる判断は、病院の相談員とご家族で話し合ってください。
本記事の情報は2026年11月時点で公開されている情報をもとにした目安であり、紹介会社・施設・自治体によって条件は異なります。退院時期や介護度に関わる判断は、病院の相談員・ケアマネジャー・自治体窓口にご相談ください。