病院の担当者から「そろそろ退院を」と言われ、老人ホームを探す時間も心の準備もないまま日にちだけが近づく。そんな状況に置かれたご家族は少なくありません。最初の一手は、病院の相談員(医療ソーシャルワーカーなど)に「退院後の行き先を一緒に考えたいので、面談の時間をください」と伝えて、面談の日程を押さえることです。

この記事では、退院日を延ばせないか相談する動きと、並行して行き先を探す動きを二本立てで整理します。病院に伝える内容、当日中に家族がやること、残り日数ごとの段取りが分かります。

退院を告げられた日に、家族が最初にやること

退院の話は、病棟の看護師や主治医から立ち話で出ることがあります。その場で結論を出す必要はありません。「家族で行き先を相談したいので、相談員さんとお話しする時間をいただけますか」と返し、面談の日時をその日のうちに決めてください。

面談を押さえたら、次の三つを当日中に済ませておくと話が進みます。一つ目は、告げられた退院予定日と、その理由として聞いた言葉をメモすることです。二つ目は、親御さんの介護保険の状況を調べることです。要介護認定を受けているか、受けているなら要介護度は何か、担当のケアマネジャーはいるかを確かめます。三つ目は、家族の窓口になる人を一人決めることです。連絡先が増えると、伝言のずれで判断が遅れやすくなります。

介護認定を受けていない場合は、市区町村の窓口で申請します。厚生労働省の介護サービス情報公表システムによると、申請から認定通知までは原則30日以内とされています(2026年11月時点)。退院日までに結果が出ない場合もあるため、早めの申請が向いています。

病院が退院の話を始める流れと、家族が知っておきたいこと

病院は、治療が一段落すると、退院後の暮らしや転院先の調整に入るのが一般的です。次に療養する場所へ橋渡しをするのも、相談員の仕事の一つです。

徳島県の「入退院支援の手引き」には、入院後1〜2週間の時点で在宅退院ができるかを判断する基準、退院後に新たに介護保険の利用が見込まれる場合の進め方、退院支援でケアマネジャーが担う役割、入院中の患者さんとご家族向けのリーフレットが収録されています。これは徳島県の手引きなので、全国共通の運用とは限りません。ただ、入院して早い時期から退院後の行き先を見立て始める流れがあると知っておくと、退院日を告げられても慌てにくくなります。

家族が知っておきたい点は、退院日の最終判断が病院の医師や相談員の側にあることです。家族ができるのは「事情を伝えて調整を相談する」ことと「受け入れ先の準備を進める」ことの二つです。この二つを同時に動かします。

「延ばす相談」で病院に伝える内容と言い方

退院日の調整を相談するときは、「困っています」だけでなく、判断材料になる事実を渡すのがコツです。次の表は、相談員や主治医に伝える内容と、その言い方の例です。

伝える内容言い方の例
退院後に必要な介護の状況「退院後は食事と移動に介助が要る見込みで、自宅の準備が整っていません」
行き先の探索状況「老人ホームを探し始めていて、見学の予約を入れています。見学日は〇日です」
介護認定の状況「認定の申請を〇日にしました。結果が出るまで、暫定のケアプランで使える方法はありますか」
家族の動ける日「面談と見学は平日の午後と土日なら対応できます」
希望する調整の幅「あと数日で見学と契約の段取りがつきます。その間の退院日の調整は可能か教えてください」

言い方のポイントは、延期を求める理由を「準備に必要な日数」で示すことです。調整できるかどうかは、親御さんの病状や病棟の状況によって病院側が判断します。難しいと言われたときは、転院やショートステイなど次の受け皿を相談員に一緒に挙げてもらってください。

神戸市の案内では、認定は申請の受理後30日以内に決定できるよう努めるとされています。入院中などで認定調査に伺えない場合は遅れることがあり、申請後から認定前に介護サービスが必要になったときは、暫定ケアプランで対応する扱いです。ここは市区町村により運用が異なるため、窓口で自分の自治体の取り扱いを確かめてください。

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「並行して探す」で、家族が当日中にやること

延ばす相談が通るかどうかは、家族の側では決められません。だからこそ、相談と同じ日に行き先探しも走らせておきます。当日中の動きは三つです。

一つ目は、希望条件をA4一枚にまとめることです。親御さんの要介護度、医療行為の有無(たん吸引、経管栄養、インスリン注射など)、月に出せる予算、希望エリア、本人の希望を書きます。この一枚は、相談員、ケアマネジャー、紹介会社のどこに渡しても使えます。

二つ目は、相談先を二か所以上に当たることです。要介護1以上で担当のケアマネジャーがいれば、まず連絡して退院後の見通しを共有します。要支援の場合の窓口は、地域包括支援センターです。病院の相談員にも、探している条件を伝えて意見をもらいます。

三つ目は、老人ホームの入居相談窓口に連絡を入れることです。一件ずつ自分で探すと、条件の確認と見学の予約だけで時間がかかることがあります。入居相談窓口は、条件を伝えると施設の候補を挙げてくれるサービスで、窓口によっては見学の調整まで頼めます。たとえばシニアのあんしん相談室は、公式サイトによると、相談・見学予約・見学同行・資料請求がいずれも無料で、受付は9:00〜18:00(平日・土日祝)です(2026年11月3日確認)。電話の前に、退院予定日と希望条件の一枚を手元に用意してください。

病院の相談員とケアマネジャーだけで行き先が決まりそうなら、入居相談窓口は使わなくても構いません。条件に合う施設の見当がつかない方や、見学を短期間で回りたい方が、併用する対象です。

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残り日数別のやることリストと、間に合わないときの受け皿

次の表は、退院日までの残り日数ごとに、動きを並べたものです。この順で動くと進めやすいという行動の提案であり、入居までの日数を示すものではありません。

時期(残り日数)やること相談先用意するもの
退院を告げられた当日相談員との面談日を決める。希望条件を一枚にまとめる病棟看護師、相談員介護保険証、お薬手帳、希望条件のメモ
残り10日前後介護認定の有無を確認。未申請なら申請する。ケアマネに連絡する市区町村窓口、ケアマネジャー申請書、主治医の情報
残り7日前後入居相談窓口に連絡し、見学の日程を組む。延ばす相談の結果を確認する入居相談窓口、相談員退院予定日、診療情報の要点
残り5日前後見学を済ませ、候補を絞る。入居の条件と費用を確認する施設の担当者、入居相談窓口質問メモ、予算の上限
残り3日前後入居の申込みと、必要書類の準備。受け入れ可能日を確認する施設、病院の相談員診断書、健康診断書など施設指定の書類
退院日搬送手段を手配し、病院で手続きを終える病院、施設入院費の支払い準備、持ち物一式

入居日が退院日に合わないときの受け皿は三つあります。一つ目はショートステイ(短期入所生活介護)です。厚生労働省の公表システムによると、連続利用は30日までで、利用者負担(1割・1日・併設型多床室)は要介護1が603円、要介護3が745円、要介護5が884円です。食費・滞在費などは別にかかります。二つ目は、リハビリを受けながら在宅復帰を目指す介護老人保健施設です。三つ目は、自宅にサービスを入れて暫定的に過ごす方法です。使えるかどうかは介護度と病状で変わるため、ケアマネジャーと相談員に聞いてください。

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よくある質問

退院日は家族が頼めば延ばせますか?

延ばせるとは言い切れません。退院日は病状と病棟の状況を踏まえて病院が判断します。ただ、行き先探しの進み具合と必要な日数を伝えると、選択肢を一緒に考えてもらいやすくなります。まず相談員との面談を申し込んでください。

退院を迫られたとき、最初に連絡するのは病院ですか、それとも老人ホームですか?

最初は病院の相談員です。病院側の考えが分かると、探せる期間が見えます。同じ日のうちに、ケアマネジャーや入居相談窓口にも連絡して、行き先探しを並行して始めてください。

介護認定を受けていなくても老人ホームを探せますか?

探し始めることはできます。ただし、入居できる施設の種類や費用は介護度で変わります。市区町村の窓口で認定を申請し、結果が出るまでの暫定ケアプランの扱いを窓口で確認してください。認定は申請から原則30日以内に通知されるとされています(厚生労働省・2026年11月時点)。


本記事の情報は2026年11月時点で公開されている情報をもとにした目安であり、紹介会社・施設・自治体によって条件は異なります。退院時期や介護度に関わる判断は、病院の相談員・ケアマネジャー・自治体窓口にご相談ください。